GeoPossession 声のトポス
「Geopossession 声のトポス」は、言語と呼応し合う「場」の記憶を四次元的に追体験してゆくサウンドアートプロジェクトであり、詩のコードで世界を書き換えるアーティスト・コレクティヴCŌEMが提案する、まったく新しい「詩」の形です。
小説、詩、戯曲、歌詞。
トポス=土地の記憶となった言語表現の多様が浮かび上がらせてゆく「東京」
3D録音による、表現者の「身体の型」を空間ごと切り取る、立体音声の採取
τόπος トポスと言語表現
詩や小説、劇作等の言語表現にとって、「場(トポス)」は最も重要な命題のうちの一つです。
なぜなら、多くの作品はイメージする「場」が実際にあり、作者はその場所を言語化する為、創作のあいだ幾度も、自らの五感をその「場」にさまよわせます。
作者自身によるトポスへの訪れ。土地に漂う創作の身体と、作者の肉体との邂逅
このプロジェクトではまず、東京を舞台にした作品を持つ創作者達に、その作品の「場」がどこなのか、正確な緯度と経度を特定してもらう事から始まります。次に、各表現者達に実際にその「場」を訪れてもらい、作品を朗読してもらいます。
これには二つの目的があります。一つは、作品を作者自らの肉声で土地に「奉納」してもらい、「トポスの記憶」としてその場=トポスに刻む事。もう一つは、該当するトポスを通して、現実の作者の肉体と、想像の中で彷徨わせた創作の身体とが邂逅する事です。
トポスが記憶する作者と作品。3D録音による、記憶のアーカイブ
土地に記されてゆく、「場に呼応した作品」と「作者の身体」。
トポスがそれらを記憶する、「明記」のまさにその瞬間を、我々は3D録音を通して空間ごと切り取り、立体性を保ったままコード化してゆきます。
※今プロジェクトでは、音や声をその質感や造形ごと記録可能な3D録音を採用する事で、表現者達の「声の形」だけでなく、その身体を通して感覚された時間および空間を切り取ります。
「Kalkul」ジオポジショニングシステム×3D録音により生み出される「トポス=場の記憶」の追体験
記憶の追体験を可能にするジオポジショニングシステム
今回、我々はオーディオカンパニーkalkulの協力を得、特定の場所に音声をマーク付けし、その場所でのみオーディオを再生出来る、ジオポジショニングの手段を得ました。
このシステムと3D録音を組み合わせる事で可能になるのは、異なる時間や気配を土地に「憑依」させ得る、音と声の精密なポジショニングです。
景色に憑依する作者の身体の気配、作品、土地の記憶
また、これらの音声は全てバーチャル上に設置される為、各作品は専用アプリ「Kalkul Aura」上の、仮想の地理から立ち上がってゆきます。なんの変哲も無い日常の風景に、別の時間軸の音や声が貼り付き、既にその場にいない作者の気配が景色に「憑依」してゆきます。
※ご視聴には、事前にKalkul Auraアプリ(現在App Storeのみ対応)のスマートフォン等へのダウンロードと、イヤホンの装着が必要です。
現実に憑依した別の現実=記憶を追体験する、4次元的体験
トポス=土地と、体験者である「あなた」の身体を蝶番にしつつ、「視覚の音」と「聴覚の音」がずれ合う事で現実の次元がきしんでゆき、五感が三次元から四次元へと拡張してゆく。それはまさに「場の記憶」の追体験そのものです。
「GeoPossession 声のトポス」を鑑賞する
鑑賞場所=Tokyo
通常、アート作品は美術館やギャラリー等に集められ、会期期間中、定められた時間内でのみ鑑賞する事が可能です。しかし「GeoPossession 声のトポス」(以降GP)は、特定の建造物の中に陳列されてはおりません。何故ならGPはデータ作品であり、「記憶」だからです。
ですからGPを鑑賞する為に、まずはあなたの意識を変えてください。あなたが向かうのはギャラリーや美術館等の、特定の箱の中ではありません。あなたが向かうのは「東京」という、都市そのものです。
都市に点在する「トポス」を巡る
あなたはこれから、小説家や詩人、劇作家やシンガーソングライターといった、言語表現者達にポイエーシス(制作)を喚起させ得た場所ーー彼らに小説や詩、戯曲や歌詞といった作品を書かせた特別な場所=トポスを実際に訪れます。
ちなみに、いつ鑑賞するかはあなたの自由です。通学や通勤の行き帰り立ち寄っても良いし、あるいは休日、付近を通りかかった時にふらりと訪れてみても良いでしょう。
あなたが向かう場所は新宿2丁目の公園です。中野駅8番プラットホーム対面の遊歩道や駿河台の女坂、りんかい線「天王州アイル」駅近くの広場、大久保の交差点や巣鴨とげぬき地蔵、梅ヶ丘の住宅街、あるいは銀座三越デパート正面です。麺屋空海参宮橋店前や神田駅の高架線下、上野駅前の歌碑広場、「浅草凌雲閣記念碑」前、旧白山通り、新宿ゴールデン街です。
あなたの足がそれらのトポスにたどり着いた時、都心ならではの景色は一見何の変哲も無い様に、まなざしに映るかもしれません。しかし言語表現者達にとって、そこは確かに特別なトポスです。そしてその事を、土地自身も既に知っています。何故ならつい数ヶ月前、作品を生み出した作者自らが、作品をその場所で朗読し、土地に記した=奉納したからです。
鑑賞する=「詩を行う」という事
そうした記憶をふくんだトポスを訪れ、立ちつくす事。
イヤフォンを装着し、kalkul Auraアプリを起動させ、オーディオディスクを通して聞こえてくるサウンドに耳を澄ます、トポスへと訪れたあなたが、その土地が喚起したポイエーシスを読む作者の声や、その瞬間の景色の音を、3Dオーディオならではの立体的な気配として感じ取る=「土地の記憶」の追体験をする事。
それが「GeoPossession 声のトポス」の鑑賞方法であり、そうした鑑賞行為自体が「詩」である、と我々は考えます。
「GeoPossession 声のトポス」体験方法
Step1.
Just click the link or Read the QR code
リンクをクリックするかQRコードを読み込むだけ。直感的にアクセス
事前の準備は簡単です。お手持ちのスマートフォンで以下のボタンをクリックしていただくか、 こちらのQRコードを読み込んでください。
(アクセス無料)
※現在App Store(Apple)端末のみ対応。Android対応し次第、告知いたします。
Step2.
Find “Topos”
体験したい作品の場所:トポスの位置を確認
作家一覧から、体験したい作品の作家名をタップしてください。立ち上がったデジタルマップの場所が、作品のあるトポスの場所です。
※詳細はイントロダクションビデオをご覧ください
なお、各自のトポスの場所については、各作家の特設ページからも確認出来ます。
(作家個人ページへは、当Projectページの作家一覧下部にある、「○○(作家名)のトポスへ」ボタンをクリックして下さい)
Step4.
“GeoPossession” possess you
設置ポイントに到着するだけ。 ジオポジショニングされた場所=トポスに立つだけで作品はオートで再生
記憶が目に見えない様に、 その場所に行っても看板等の目印は一切ありません。 あなたがその場所ーーかつて作者が立ち、 作品を朗読した、 その記憶をふくんだトポスを踏みしめた瞬間、 作品は自動的にあなたの耳の内側へと再生されてゆきます。
※上記のアプリシステムを開き、イヤフォンを耳に装着した状態である事。
この時、 あなたの耳にPossess/憑依してゆくのは、 あなたが立っているその土地に喚起された作品であり、 創作者自身の声であり、 作者が朗読したその瞬間の時間の気配です。 何よりそれはその場所の、 確かな記憶でもあります。
【「GeoPossession 声のトポス」特別企画】
参加詩人 藤井貞和氏による
作品巡回ツアー
Report & Interview.
東京都内14カ所を巡り、デジタル上に設置された3Dオーディオ作品を、Kalkul Auraアプリを通して視聴する、サウンドアート体験「GeoPossession 声のトポス」。
2022年1月15日のスタート直後、一足先に体験する参加作家(詩人 藤井貞和氏)に同行し、お話をうかがってまいりました。
●当日巡回コース(所用約1時間)
※移動はJR山手線使用
神田駅:神田ホーム&高架線下(藤井貞和氏の詩「神田駅で」視聴)
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上野駅:『あゝ上野駅』歌碑前(額田大志氏の戯曲「ぼんやりブルース」視聴)
⇩
巣鴨駅:高岩寺境内(伊藤比呂美氏の詩『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』視聴)
※「GeoPossession 声のトポス」体験方法の参考に、また今後企画する「トーク&ツアー」イベントの予習としても、ぜひご覧ください!
GeoPossession=憑依する土地
「Geopossession」とは「憑依する土地」、あるいは「土地の憑依」を意図した、CŌEMの造語です。
言語表現者のポイエーシス(創作)を呼び覚ました土地(Geo)に、作者の肉声で作品を憑依(Possession)させ、さらにその明記の記憶を鑑賞者の五感に憑依させてゆく。
土地を依り代にした様々なもの(創作行為や記憶、作者の声や身体の気配)を体感するという、今プロジェクトのコアの部分であり、目の前の現実に別の時間軸の現実が憑依するジオポジショニングシステムの概念を端的に示唆するものとして、今プロジェクトはタイトルを「憑依する土地」=「Geopossession」といたしました。
声のトポス
また、サブタイトルの「声のトポス」につきましては、鑑賞者の肉体および五感に直接触れ、ポイエーシスや作者の気配を媒介する、蝶番の役割を果たす「場=トポス」と「声」をタイトルに添える事で、今プロジェクトの意図を補強すると共に、日本語話者への訴求を深める狙いがあります。
CŌEM「GeoPossession 声のトポス」事業
Producer ジョーダン.A.Y.スミス(総合プロデュース)
Curator, Creative Director 永方佑樹(コンセプト立案、キュレーション、クリエイティブディレクション)
Audio Engineer ダリン・ダーリンジャー(3Dオーディオレコーディング、ミキシング)
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特別協賛 special cooperation by Kalkul
Bartek Kolacz& Mehdi Hamadi
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Special thanks for Designer 則武 弥(フライヤーデザイン)